京セラ、スマホ基地局断念

京セラが高速通信規格「5G」の基地局開発を断念したことがわかった。2027年をめどに参入する方針を明らかにしていたが、競争環境が激しく採算が見込めないと判断した。基地局関連の開発は電波をつなぐ中継装置などに絞り込む。重要インフラであるスマートフォンの通信網の国産化が後退する。と日経記事にあります。

基地局はスマホ端末と無線で通信し電話網やインターネットとつなぐ装置で、端末と電波をやり取りするアンテナとサーバー、中継装置などで構成される。現在は5G向けが中心で、中国の華為技術(ファーウェイ)やスウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアが世界シェアの8割近くを握り、NECなどの日本勢は2%未満にとどまる。NECや富士通など「電電ファミリー」と呼ばれる日本メーカーから優先的に調達してきたNTTドコモが24年に方針を転換しエリクソンからの調達を増やすなど、国内勢の事業環境は厳しさを増している。国内メーカーのシェアが低迷する中、京セラが参入すれば通信事業者の選択肢が増えると期待されていたが、開発撤退で基地局の国産化推進は一段と遠のく。

京セラは23年から基地局の開発を始め、25年2月には27年をめどに商用化する計画だった。人工知能(AI)で通信機器の消費電力を抑える独自技術などを活用し、導入や運用コストを大幅に削減する目標だった。開発投資が膨らみ、十分な収益が確保できないと判断した。京セラは25年3月期の連結純利益が前の期比76%減の240億円となるなど業績立て直しの最中だ。パワー半導体事業の売却を決めるなど業績不振に伴う構造改革を進めるなか、電子部品など稼げる事業に経営資源を集中する。

京セラの撤退は、

  • 企業としては正しい意思決定
  • 国としては戦略的損失
    という“ねじれ”が背景にある。

経営者として最も重要なのは、「勝てる市場に注力し、勝てない市場からは撤退する潔さ」であり、今回の判断はまさにその体現と言えると感じた記事でした。