ドイツ、失業者10年ぶり300万人超え

欧州最大の経済大国ドイツで景気の低迷が雇用不安に波及しつつある。8月の失業者は10年ぶりに300万人の大台を超えた。エネルギー高が直撃した製造業でリストラが相次ぎ、日本のライバルとなる自動車産業は競争力低下に危機感を強める。「もし自動車産業が無くなれば、ドイツ全体が貧しくなる」。メルツ首相は9日、南部ミュンヘンで開催した国際自動車ショーで産業競争力の衰えに危機感をにじませた。安価で性能が高い中国車が台頭するなか、国内雇用を支える自動車産業への後押しを約束した。と日経記事になります。
欧州で中国車の販売シェアは高まっており、中国の電気自動車(EV)大手、比亜迪(BYD)は販売店を増やして攻勢をかける。独連邦雇用庁によると、8月の失業者は302万5000人と2015年2月以来となる300万人を突破した。夏季休暇に伴う季節要因が押し上げた側面はあるが、前年同月比でも15万3000人増えた。ウクライナ危機で高インフレに見舞われた22年以降は増加基調が鮮明だ。

失業者の増加はドイツ企業の厳しいリストラを映し出す。失業の大半は移民などの外国人ではなくドイツ人で、かねて企業の景況感調査でも雇用削減による実体経済への悪影響が指摘されていた。実際、リストラの動きは連鎖している。大手会計事務所EYの調査では、25年6月までの1年間でドイツの自動車産業で従業員5万人あまりが削減された。ドイツ産業全体における人員削減数の45%を占める規模だ。ドイツ経済研究所(IW)の集計によると、自動車関連の雇用は30年までに9万人ほど純減する見通しだ。フォルクスワーゲン(VW)が30年までに独国内の従業員3万5000人を削減する計画を公表するなど、部品大手も含めてリストラ計画が進む。

ドイツはGDPに占める製造業の割合がおよそ2割で、フランスなどの1割台より高い。ウクライナ危機に伴うエネルギー高は製造コストの上昇に直結した。ウクライナ侵略前、ドイツはパイプラインで安価なロシアのガスを大量に輸入していた。侵略後にロシアからの輸入削減を迫られ、エネルギー価格が上昇。電気や素材の高騰につながり、幅広い産業が打撃を受けた。ドイツの産業は輸出依存型。サービス業が発達していない分だけ、影響は深刻だ。
ドイツ経済の低迷は、「製造業国家の成長モデルが限界を迎えた」象徴的事例と考える事が出来ると思います。経営者視点では、“縮小する市場で守る” のではなく “変化する市場で創る”という発想への転換が鍵になると思います。