パナソニックHD、住設子会社売却

パナソニックホールディングス(HD)がYKKに傘下のパナソニックハウジングソリューションズを売却することを決めた。2025年から進める構造改革に向けて大きな前進となるが、構造改革の後、パナソニックHDが何で稼ぐのかの最終的な姿が見えないという市場の懸念は払拭できていない。と日経記事にあります。
ハウジングは旧松下電工(後のパナソニック電工)の事業の一部を引き継いだ会社だ。パナソニックグループは松下電工と松下電器産業の統合、11年の三洋電機買収などで企業規模が肥大化し、コングロマリットディスカウント(事業多角化による企業価値の毀損)が課題となっていた。パナソニックHDの楠見雄規社長が進める構造改革はこの解消が主眼だ。松下電工との統合は住宅メーカーのパナホーム(現パナソニックホームズ)も含めたグループ全体で、住宅から中の設備、家電までパナソニックブランドで提供する狙いだった。パナソニックホームズもトヨタ自動車との共同出資会社の傘下に入っており、今回のハウジングの売却はこうした戦略の頓挫を意味する。
パナソニックHDは構造改革にあたり、データセンター向け電源や工場向けのシステムなどを「注力分野」に、車載電池などを「収益基盤」に位置づけた。他の事業は、撤退や事業売却を検討する「課題事業」、てこ入れが必要な「再建事業」、事業競争力や立地に課題があり見極めが必要な「事業立地見極め事業」に分類して事業ポートフォリオを整理している。

パナソニックHDの隅田和代最高戦略責任者(CSO)は17日都内で開いた記者会見で、売却にいたったハウジングと、家電やテレビなどとの違いについて「家電やテレビとは事業の性質が全く違う。自前でやっていくよりは力のあるYKKAPと組んだ方が圧倒的に実効性が高くスピードも上がると判断した」と述べた。一方、YKKにとって今回の買収は「渡りに船」と言える。住宅設備を手掛ける子会社のYKKAPは30年度以降に売上高1兆円の達成をめざしている。両社の売上高を単純合計すると1兆411億円で、住設業界ではLIXILに次ぐ企業規模となる。

窓やサッシ、玄関など住宅の「外」に強いYKKに対し、ハウジングはトイレやシステムキッチンなど「内」が得意で、商材や事業領域で重なる部分が少ない。「住宅設備の7〜8割をカバーできる総合メーカーが誕生する」。17日に都内で開いた記者会見でYKKAPの堀秀充会長は胸を張った。35年度にはYKKAPとハウジングの合計の売上高を1兆5000億円に伸ばす目標を掲げた。少子高齢化などにより国内の新設住宅着工戸数は減少している。さらなる成長にはリフォーム需要の取り込みが必須であり、ハウジングの商材や多様な販路は魅力的だった。
YKKにとっては、住宅設備の“ワンストップメーカー化”を実質一気に達成できる買収となるでしょう。YKKは海外企業に脅かされにくい産業構造もあり、今回の買収は事業規模拡大・ブランド強化・販路拡大の三拍子揃った戦略的王手と感じた記事でした。