昇進への道はAI資格 ユニ・チャームや丸紅

ユニ・チャームは2026年1月から人工知能(AI)関連資格の取得を係長級への昇進要件に加える。AI活用能力を高めて業務の生産性を高めるためで、丸紅や三菱食品も若手に資格取得を義務付ける。日本は海外よりAI学習の意欲が低く、国際競争力の低下が懸念される。企業主導でAIスキルを底上げする動きが広がってきた。と日経記事にあります。
ユニ・チャームが昇進要件に加えるのは、日本ディープラーニング協会の「G(ジェネラリスト)検定」やデータサイエンティスト協会の「データサイエンティスト検定」など。最低1つの取得を義務付ける公的資格にAI資格を導入し、20〜30代を中心に約500人に学び直しを促す。企業がAI資格取得を「奨励」から一段引き上げている背景には、日本でAI学習の意欲が低いことがある。人材大手インディードリクルートパートナーズの日米調査によると、日本は生成AIを学んでいない人が企画や営業、エンジニアの各職種で6〜8割。大半の労働者がすでに生成AIの学習を始めている米国との差は大きい。
丸紅は今春から若手社員にAIや機械学習などの分野を含む情報処理の国家資格「ITパスポート」の取得を義務付けた。同資格の合格率は約5割。入社2年時に次の等級に昇進するために必須の資格とし、25年度は約100人が対象になる。三菱食品も24年、新卒入社した社員を対象に同資格の取得を必須とした。総合職の約650人が対象で、入社5〜7年目ごろの主務に昇進するには資格取得が必要になる。「AIを含むIT(情報技術)の基本的な知識を社会人の基礎力として身に付けるため」(同社)とする。

日本生産性本部によると、23年の日本の1人当たりの労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟の38カ国中、32位と低迷する。AIスキルは生産性向上に欠かせないが、PwCジャパングループによると、生成AIを業務プロセスの一部に組み込む企業は米国が61%、中国が60%の一方で、日本は24%にとどまっている。27年度からG検定の取得を課長級の管理職の昇進要件にする三菱商事のように、海外勢との競争にさらされる日本企業を中心に危機感は強い。米国では余剰人員のリストラの背景にAI普及があるとの見方もある。米雇用調査会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、米国企業では25年、AI導入を含む技術革新で2万人超の人員削減が見込まれる。リストラが容易ではない日本では従業員のAIスキルを向上させて業務の生産性を高めようとする意識が強い。

社員のAIスキルを高めるには積極的な投資が欠かせない。大日本印刷は全社員を対象にAI関連の資格取得時に奨励金を支給している。GMOインターネットグループはAI人材の育成に年約10億円を投じる。複数の生成AIの利用を促し、社員1人あたり月1万円を目安に費用を補助する。第一生命経済研究所の柏村祐主席研究員は「労働生産性の低さと人手不足に直面する日本企業にとってAIは必須となる時代に入った。IT部門だけではなく、トップダウンで組織全体のAIスキルを高める必要がある」と話す。
経営者がAIを評価制度・業務設計・意思決定に本気で組み込める経営に移行する時期と感じた記事でした。