電力争奪戦でアルミ危機

アルミニウムの国際価格が高騰している。アルミは生産に多くの電力を使い、「電気の缶詰」とも呼ばれる。同じく電力を消費する人工知能(AI)のブームで、電力確保が難しくなるとの観測が先高観を強めている。国際指標となるロンドン金属取引所(LME)3カ月先物は上昇基調が鮮明だ。2日に心理的節目である1トン3000ドルを突破。6日には1トン3138ドルまで上昇して2022年4月下旬以来の高値を付ける場面もあった。と日経記事にあります。
足元の上昇要因として市場関係者が指摘するのは、同じ非鉄金属である銅価格の高騰だ。銅は需給逼迫懸念から25年の上昇率は42%に達し最高値圏での推移が続く。半面、アルミの年間上昇率は17%にとどまる。銅に比べ出遅れ感の強いアルミに投資マネーが向かっているという。アルミ価格を押し上げる要因はそれだけではない。市場で関心を集めているのは「電力確保危機」への懸念だ。アルミは原料鉱石となるボーキサイトから地金にする製錬時に大量の電力が必要となる。1トンのアルミ地金を製造するには約1万5000キロワット時の電力が必要だ。一般家庭の年間消費量の実に3~4世帯に相当する。電力を確保できなくなり、アルミ製錬ができなくなるのでは――。夢ではなく現実の世界で起こっている。

「操業停止を検討しなければならない」。25年10月下旬、英豪資源大手リオティントは電気代高騰を受け、オーストラリアのアルミ生産の4割を占めるトマゴ製錬所を閉じる可能性に言及した。実際には豪政府が生産継続に協力する姿勢を示し混乱は収束しつつあるものの、電力確保の難しさを象徴する出来事となった。同年12月、今度はアフリカ南東部モザンビークが舞台となった。豪資源企業サウス32は25年12月、傘下企業が同国で運営する製錬所を26年3月中旬から停止すると発表した。現地の電力会社が電力供給の契約金額を大きく引き上げたため、存続不可能と判断して契約を更新しなかったためだ。電力確保危機はまだ序の口。危機を加速させると業界で懸念されているのが、AIの普及を背景に急成長が見込まれるデータセンターだ。

米アルミニウム協会によれば資金力のあるテック企業はデータセンター向けの電力調達で1メガワット時115ドル以上を払っているという。一方、アルミ製錬業は同40ドル程度で10~20年の長期契約を志向する。米国では輸入されるアルミに対して50%の追加関税が発動されており、本来なら自国内のアルミ製錬所を拡張する機運につながりやすい。だが米製錬業の保護策の持続性には不透明感が強い。
丸紅が25年12月にまとめた相場見通しによればアルミ価格は28年には1トン3200ドルまで上がると想定する。同社軽金属部地金課の赤坂英佑課長は「米国での電力調達競争をみてもアルミ製錬業を取り巻く環境は厳しくなりつつある」とし「将来的にアルミ製錬所の新設どころか維持すら難しくなりそうだ」と話す。あらゆる産業に欠かせないアルミだが、AIブームの波に押され、電力はデータセンターへと向かう。銅の価格高騰で代替材としてのアルミへの需要が強いところに供給懸念が強まれば、価格上昇のスパイラルにつながりうる。
アルミは不足しているのではない。アルミを作る「電力を使わせてもらえなくなりつつある」。と解釈できると感じます。アルミ相場の上昇はAI時代における産業の優先順位が変わったことを示すシグナルであり、経営判断の前提を根本から見直す必要がある局面に入ったと考えます。