〈小さくても勝てる〉M&A18倍、成長後押し

大企業だけでなく、中小企業もM&A(合併・買収)を活用して成長を探る動きが広がっている。金型製造のハシダ技研工業(大阪市)は後継者不在に着目して26社を買収し、売上高を10倍弱に伸ばした。中小は高齢経営者が多い。M&Aは事業承継問題を解決する経営戦略の一つになる。と日経記事にあります。
中小企業庁によると、民間のM&A支援機関を通じた件数は2023年度に4681。過去約10年の間で18倍に増えた。成長の原動力として買収を繰り返してきたニデックの「中小版」といえそうなのがハシダ技研だ。「後継者不在で困っていることに加え、成長の伸び代がある会社を買収してきた」。同社の吉岡亨浩社長は語る。3月末、宮崎県日向市で食品関連の機械設計を手がけるMFE HIMUKAを買収した。1月に買収を巡るトップ同士の面談を実施した後、わずか約3カ月で案件がまとまった。それは過去に積み上げてきた実績の信頼感があったからだ。

ハシダ技研は1967年、現在の橋田寛会長が創業した。買収を始めたのは2008年に遡る。M&A仲介の日本M&Aセンターの営業を受け、大阪府東大阪市で車両部品製作を手がける谷田製作所を傘下に収めた。ここに派遣されたのが当時24歳の吉岡氏だった。
吉岡氏は高校卒業後、02年に溶接工としてハシダ技研に入社した。橋田氏の指名を踏まえ、統括役として事業改善に取り組んだ。当時約20人だった組織は金型を使わず新幹線の車両部品を作っていたが、職人肌の従業員は20代の若者の指示に従おうとしない。週末含めて深夜までがむしゃらに働く姿をみせると、ようやく半年ほど後に心を開いて業務をこなしてくれるようになった。
高かった仕入れ価格の見直しも進め、最初の年に1000万円だった経常利益は翌年5000万円に上向いた。これが成功体験となり、後継者のいない経営改善の余地がある中小の買収を推し進めた。今まで買収に総額90億円ほどを投じ、08年2月期に24億円だったグループ売上高は直近の25年2月期に231億円まで増えた。買収した会社すべてが黒字経営を維持しているという。

買収戦略でユニークなのは業種にこだわらず、財務内容にもあまり目を向けない点だ。今は発電用のガスタービンの部品から自動車向けの小さなナットまで幅広く製造する。「小ロット多品種」のラインアップを確立したことで、ある一つの業界の景気の波に左右されにくくなった。資材の購買力向上や設計から組み立てまで一貫してできる生産体制も実現した。
債務超過の会社も業務や勤務体系の改善で黒字に転換させた。買収による成長で自己資本も厚みが増し、25年までの4年間で自動化関連などに40億円の設備投資を計画している。吉岡氏は「人と技術を大事にして、将来は500億円の売上高をめざす」と意気込む。
現時点での数少ない成功事例とは思いますが、すごい会社があるものですね。