AI代替で雇用ピンチ

米国のテック業界で、人工知能(AI)が人手を代替することを理由に雇用を絞り込む動きが始まった。Amazonなどが方針を示した。有名大を卒業してもテック企業に入社できない事例も相次ぐ。人件費を減らすための従業員削減にAIの影響が加わり、採用の門が狭くなっている。と日経記事にあります。

「新卒エンジニアはAIに取って代わられる」。米カリフォルニア大バークレー校でコンピューター科学を専攻し、今春卒業したソロン・マーさんはこう感じている。テック分野の有力大学を卒業したにもかかわらず、内定が出ないからだ。自身だけではない。多くの同級生が同じ状況という。「100社に応募しても内定を得られない人がいる」と話した。全米で多くの大学新卒者が雇用環境の悪化に直面している。ニューヨーク連邦準備銀行によると、大卒以上の学歴をもつ22~27歳の失業率は3月に5.8%と約4年ぶりの高さだった。新型コロナウイルス禍以降では最悪となった。トランプ関税などで経済の不透明感が高まるなか、企業が雇用拡大に慎重になっていることが背景にある。これに加えて、テック業界ではAIで人手を代替する動きが採用を減らすとの懸念が急速に広がっている。

米有力AI企業アンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)は5月下旬、ホワイトカラーの仕事は「AIによって5年以内に入門レベルの雇用の半分が消滅しうる」との分析を米メディアで語った。現在のAIは「優秀な大学生と同じくらい有能」だとして、特に若手の採用が抑えられると説明した。アマゾンのアンディ・ジャシーCEOは自社の従業員に警鐘を鳴らした。17日、「AI活用で効率が高まり、今後数年間で管理部門の従業員数が減少する」との見通しを示した。AIで多くの作業を自動化すれば、今より少ない従業員数で事業を運営できるとみる。

米ベンチャーキャピタル(VC)のシグナルファイアがビジネスSNS「リンクトイン」をもとに有力テック企業15社の採用動向を調べたところ、各社の採用全体は24年に前年比15%増えた一方、経験1年以下の新卒者では25%減った。19年には新規採用の15%を経験1年以下の人が占めたが、24年は7%に急減している。AIは、テック企業のレイオフ(一時解雇)の理由にもなり始めている。AIによる業務効率化が最も早いのはプログラミングの分野だ。米報道によると米マイクロソフトが5月に米西部ワシントン州で削減した2000人のうち4割がソフトウエアエンジニアで、一部はAIによる代替が理由とみられる。業界では、AI活用により若手の採用が減れば、企業の長期的な人材育成が滞るとの懸念が出ている

AIによる省人化は避けられないと思いますが、人材育成を怠れば将来的に「即戦力不足」という深刻なリスクに直面すると思いますので、中長期的な人材戦略が必須となります。また若者はAIを敵と見るのではなく「強力な道具」と捉え、専門性・人間力を磨き、従来型の就職観念に縛られない柔軟なキャリア形成が鍵となると言えるでしょう。