スポーツ中継、有料シフト

米動画配信大手ネットフリックスが、2026年3月開催のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の全試合の独占放映権を取得した。国内で地上波での生中継がされない見通しだ。放映権料が高騰し無料放送を前提にした現状の仕組みでは採算が取れない。海外発スポーツはネット配信に主軸が移っている。WBCが決定打となる可能性がある。と日経記事にあります。

日本が優勝した前回の23年のWBCは、大リーグの大谷翔平選手の活躍などが注目を集め人気を博した。放映権料は約30億円だったとされる。ネトフリは今回の放映権料を非公開としているが、前回をさらに上回るとの見方が出ている。東京での大会の主催者の一社である読売新聞社は26日、「本大会ではWBCインク(WBCI)が当社を通さず直接ネットフリックスに対し、全試合について日本国内での放送・配信権を付与した」との声明を発表した。

「NHKや民放各局は報道目的での試合映像は放映でき、ニュースでは試合のハイライトを従来通り見られる」ともしている。前回の東京大会の試合中継は、WBCIが読売新聞社を通じて国内の民間放送局や海外の配信事業者に放送・配信権を与えていたと説明した。TBSホールディングス(HD)傘下のTBSテレビは「(ネトフリの)発表が出されたことは承知している。事実関係の詳細を確認中だ。国民的関心の高いスポーツイベントを無料の地上波放送で中継することの意義や視聴者の期待は非常に大きいと考えている」とのコメントを出した。

放映権料の高騰で世界的なスポーツイベントの地上波放送は年々厳しくなっている。在京キー局の幹部は「勝敗によって日本戦の試合数が変わるリスクもある。時差の関係でゴールデンタイムに放送できないため、視聴率が上がりにくくテレビ広告では費用を回収できない」とこぼす。

ネトフリは15年に国内でサービスを開始して以来、有料会員を順調に増やしている。24年上半期には国内会員1000万世帯を突破した。日本発の定額制動画配信サービスでは最大となる「U-NEXT」の会員数473万人と比べ2倍以上に引き離す。動画配信大手は顧客との接点を広げることで巨額な投資を回収する戦略だ。「玄関口」として存在感が高まるのが、通信大手と組んだスマートフォンの通信料金とのセット売りだ。価格競争一辺倒にならないように付加価値を打ち出す。特にスポーツはライブ視聴による通信の需要が期待でき、顧客離れ防止にもつなげやすい。

地上波で見られなくなると視聴者が限定され、「ライト層」が減る可能性がある。スポーツ振興の観点からはマイナス影響を懸念する声も出ている。ネトフリによるWBC独占配信は、日本のスポーツビジネスのあり方の議論にも一石を投じる動きとなる。

今回のNetflixによるWBC独占配信は、単なる放映権の移動ではなく、日本のスポーツビジネスと放送産業の収益構造を中期的に再編する契機になると考えられます。