雇用と賃金の関係「年功制」がもたらす影響
勤続年数が長くなるにつれて賃金が高くなる年功賃金が、日本経済の閉塞感を生み出しているという考え方があります。年功賃金は若者の雇用や昇進機会を奪い、イノベーションを妨げているのでしょうか。と日経記事にあります。
米国の経済学者エドワード・ラジアー氏は、「賃金の後払い理論」を提唱したことで知られます。この理論では、働く期間を通じた限界生産力の総和は賃金の総和に等しくなります。能力が高い人は高い限界生産力の総和に対して高い賃金が支払われ、能力が低く限界生産力の総和も低ければ支払われる賃金も低くなります。
米ノースウエスタン大学のニコラ・ビアンキ氏らは、イタリアで退職年齢が引き上げられた際のデータをもとに、退職遅延者の割合が高い企業ほど、若年労働者の賃金が下がる傾向にあることなどを明らかにしました。またドイツの研究では、年功制の企業ほど若い女性や他の企業での経験が長い人、外国人を採用しないことが示されています。多様性が確保されなければ、イノベーションに悪影響が及ぶかもしれません。
では、勤続年数と生産性の関係はどうでしょうか。ブリュッセル自由大学のニコラ・ガリアルディ氏らは、ベルギーの企業に関するデータを使い、①資本集約的な企業では勤続6年以上の労働者が生産性に正の影響を与える②反対に知識集約型企業(科学研究や通信など)では長期勤続は負の影響をもたらす――と報告しています。
より革新的な企業は、最新で斬新なアイデアを持つ、勤続年数の短い労働者が支えていることを示しているようです。
日本では少子高齢化により、どの産業も人手不足が顕著な状況ですが、企業として若さと多様性を保つ事はイノベーションの観点からすると重要な要素となる事が改めて発見できる記事でした。イノベーションは急に起こる事では無く、日々の地道な努力を積み重ねる事でしか起こらないものですから、お客様の声、社員さんの声、社会の変化を捉えながら前進していこうと思います。