「3COINS」のパルHD、下意上達で成長

300円商品が中心の生活雑貨店「3COINS(スリーコインズ)」や衣料品を手掛けるパルグループホールディングス(HD)。2025年2月期に連結純利益で3年連続の過去最高を見込む。株価は3年で4倍になった。けん引するのは「飽きない売り場」づくりやSNSの活用などだ。底流には若い社員の自主性を尊ぶ創業者の経営哲学がある。と日経記事にあります。

パルHDでは祖業の衣料事業が連結売上高(24年2月期に1925億円)の6割超を占めるが、スリーコインズを含む雑貨事業が4割近くまで上昇してきた。雑貨事業の売上高比率は38%と、新型コロナウイルス感染拡大前の20年2月期より11ポイント上昇した。この間、連結売上高、純利益(128億円)はそれぞれ46%、83%伸びた。好業績を追い風に、過去3年の株価上昇率は同業大手を上回る。

「飽きない売り場」づくりを支えるのは、若い社員らが率先する旺盛な商品開発だ。同社には創業のころから「拝啓社長殿」という制度がある。年2回、若手社員やアルバイトが社長に新ブランドの立ち上げなどを提案する。創業者で現在、取締役相談役の井上英隆氏が「自分はファッションは素人。現場から提案を聞きたい」との考えで始めた。

社員は提案が採用されてブランドが成長すれば、現場のトップであるブランド長に任命される。自身のアイデアをブランドとして実現できる自由な風土が同社には根づいており、社員のやる気を引き出す。同社アパレルの主力ブランドとなった「ガリャルダガランテ」などを拝啓社長殿で提案した山崎修氏は中核事業会社パルの専務になった。

効率経営で稼ぐ力を高め、24年2月期の自己資本利益率(ROE)は21.7%と、ファーストリテイリング(24年8月期、19.4%)を上回る。一方で手元資金が積み上がり、手元資金の総資産に対する比率は資金が豊富とされる5割を超えて高水準にある。

創業から50年にわたり、パルHDを率いた井上相談役は5月に取締役を退任し、経営の第一線から退く。松尾勇会長は「井上イズムを次の世代に継承していく」と強調する。市場では「井上氏の下で育った若手やマネジメント層が現在の成長を支えており、経営の継続性に不安はない」(大和の川原氏)との声もあるが、視線は既にその先に向いている。