ノジマ社長「M&Aに今後5年で5000億円」

家電量販市場が成熟するなか、ノジマが異例の膨張を続けている。2026年3月期の連結売上高は9300億円を見込み、14年3月期比で4倍以上に増える。成長の原動力は異業種へのM&A(合併・買収)だ。「今後5年間で5000億円なら買収に充てられる」と意欲を燃やす野島広司社長は、どんな企業像を目指しているのか。「1〜2年のうちに1兆円企業の仲間入りをするだろう。3兆円企業になるには、皆の成長が礎になる」。7月5日、東京湾を走る客船「シンフォニーモデルナ」で開いた内々定式で、26年に入社予定の学生らを前に野島社長はこう挨拶した。と日経記事にあります。

野島社長はことあるごとに「3兆円企業を目指す」と口にしてきた。「2兆円だとすぐいけちゃいそう。だからもっと先の3兆円と言って、社員に奮起を促している」実際、ノジマの売上高は拡大してきた。成長を支えるのは度重なる異業種へのM&Aだ。キャリアショップでは15年にアイ・ティー・エックス(ITX)を850億円で、23年にはコネクシオを約850億円で買収した。17年には富士通う子会社のニフティの個人向け事業、24年に「アニマックス」などの運営会社、25年にパソコン製造のVAIO、マーケティング支援のストリートホールディングスなど次々と傘下に収めた。

買収を繰り返す背景には、飽和した家電小売市場に対する危機感がある。調査会社のNIQ/GfKジャパン(東京・中野)によると、24年の市場規模は23年比1%減の7兆円弱。4年連続の減少となった。家具のニトリ、雑貨のフランフランなど異業種も家電販売に力を入れており、競争は激化している。業界最大手のヤマダは「くらしまるごと」戦略を掲げ、住宅会社などを次々と買収している。ビックカメラはソフマップを通じた中古品の販売に力を入れている。ノジマが3兆円企業になった暁にはどんな会社になっているのか。

「投資ファンドのようになりたいのかもしれない」(ノジマ幹部)。野島社長が描く会社の将来像についてこうみる向きもある。ノジマは22年11月に投資ファンドを立ち上げたが、23年3月に解散を発表した。野島社長は「シナジーの薄い事業はファンドで買収して勉強しようと思ったが、まだ向いていない」と振り返る。ただ日本プライベート・エクイティ協会に入っており「今は勉強して知見を蓄えているところ」。ファンド組成への関心は衰えていない。創業者の息子で中興の祖でもある野島社長の影響力は大きい。「社長がいなくなったら瓦解する」(関係者)との声もある。失敗のリスクも大きいM&A戦略のかじ取りに加え、後継への引き継ぎという重い課題とも向き合う必要がある。

ノジマは日本の小売業のなかでも稀有な「異業種M&Aドリブン企業」としてユニークな存在になりつつあります。しかし、その成長は「野島社長の強烈なビジョン」と「リスクマネジメント能力」の両輪が噛み合って初めて持続可能になると言えるのかも知れません。